はちより

〜片道書簡〜

「ノコちゃんって呼んで!」

 

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グングン伸びる琉球朝顔オーシャンブルー)。

いかがお過ごしですか?

今日は名前の話。
私は同じ人に対して、いろんな呼び方をしたくなるんだ。
毎日よく呼ぶ身近で親しく思う相手……今だと夫なのだけど、そういうことってない?

普段呼ぶ「むーくん」をはじめ、「むねさん」といったり、「むねいち」と呼び捨てにしたり、ふざけて「お兄ちゃん」や「ダンナ様」「そこのお兄さん」、さらに名前とはだいぶかけ離れた「何故その呼び方?」と夫が自分のことだとわからない呼び名まで。
動詞の五段活用ならぬ名前の何活用だかわからないけれど、口の中で転がすように名前をとかしていく。

漫画家の羽海野チカさんが読者とのQ&Aにこんなふうに答えていたの。
「(漫画のなかで)呼び方には、ニュアンスによって微妙な使い分けがあったりするのでしょうか?」という問いに対して、

--(引用はじめ)--
私自身、友人や家族を呼ぶ時、瞬間瞬間で呼び方が変わるんです。たとえば兄なら「兄さま」「あにさま」「おにいちゃん」「こーちゃん」。改まった時、お願い事をしたい時、ふざけた気持ちの時で変わります。皆さんもそうじゃないでしょうか? だからマンガでもそうしています。
--(引用おわり)--

と返していて、とても腑に落ちたんだ。

乳児院児童養護施設育ちのノコは、はじめ「ノコちゃん」以外受け付けなかったの。
交流の時はまだしも委託され、同じ屋根の下で一緒に暮らすようになると、さまざまな呼び方をしたくなってね。

たとえば、呼び捨てというか、名前呼び。
別に上位に立ちたいわけでないのだけど、幼稚園の保護者同士の会話のなかで「ちゃん」付けだとちょっと浮いたりする。
その場にノコがいなければいいのだけど、園児なので大抵近くにいて、耳ざとく聞きつけては激怒する。

ノコ曰く「大事にされていない気がするからイヤ」。
呼び捨てだけでなく、「ノコ」を転化させた「ノーちゃん」「ノンちゃん」「ノコノコ」とかもNG。
あだ名で呼ばれた経験がないの? と不思議に思ったよ。

でね、思い出したの。
里親登録の実習で施設に行った際の注意事項。
・子どもの名前はきちんと呼ぶこと。
・勝手に名付けないこと。
・似ている何かの名前で呼ばないこと。

要は、あだ名禁止
乳児院での実習だったので、子どももまだ小さくてお喋りが達者でないため、その時は疑問に感じなかったんだ。

ノコの「ノコちゃん」のみの呼び方に戸惑って、あだ名について調べたところ。
いじめの原因になるおそれがあるからと禁止している学校もあるらしい。
教室であだ名が飛び交う子ども時代を過ごしたので、時の流れを感じたよ。

あだ名ってさ。
呼ばれた人がイヤなあだ名はモチロンよくないけれど、心の距離を縮める力があると思うのだけどな。

その後、委託7ヶ月目にてノコは呼び捨てを容認。
「ノコー!」と呼んでも怒らなくなりました。
先輩里親さんに「呼び捨てにしててビックリしたよ。早かったね!」といわれ、呼び名については里子によくある話なのかな、と思ったよ。
今は、「ノコノコ」も「のこりん」もおでこのカワイイ「でこちゃん」もママの「宝物ちゃん」も何でもござれになりました。
(でも、夫が呼ぶヘンテコリンな呼び名には「それ、イヤ!」と怒るときも)

ただね、呼び捨てをあんなに拒んでいたノコが今やお友達を大声で呼び捨てにしていると(それも乱暴な感じで!)、ハラハラしちゃう。

それにしても、毎日かわいいだけでなく、憎たらしいこともたくさんあるけど、私が呼び名を変えたくなったということは……
つまり、ノコが身近な存在になってきたんだな、と自分のことだけど、改めて思ったよ。
今までどんなあだ名があった?
それでは、またね!

はちより

※引用について
3月のライオン おさらい読本 初級編」白泉社 161ページより